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京都国際映画祭連携企画 京都府立盲学校で触ってふれあうアートを一緒に作るSatoの『もこもこTシャツ』ワークショップを開催!

2016年9月30日(金) レポート


「京都国際映画祭」は、過去2回にわたり、京都の皆様と数々の連携企画を行ってきました。3回目を迎える今年は、京都府健康福祉部のご協力を得て、京都府立盲学校と連携して北海道在住のアーティスト・Satoさんによる『もこもこTシャツ』のワークショップを開催しました。

9月30日、ノーマライゼーションをテーマに描き、作品の中に手話や点字を取り込んで、全ての人が楽しめるアート活動を行うアーティスト・Satoさんが、京都府立盲学校の生徒達に立体的に浮かび上がる特殊なペンを使用し、触ってふれあいながら作成する『もこもこTシャツ』のワークショップを行いました。

参加したのは、京都盲学校小学部から4名の男子児童と、中学部から3名の男子生徒と1名の女子生徒の計7名です。Satoさんから「描きたいものを早速描いていきましょう!」というご挨拶の後、すぐに取り掛かりました。

恐竜や古代の生物を描く男の子、猫や犬、馬など動物を描く子、「家の金魚」をモチーフに図形を組み合わせる子、煌びやかな装飾を施す想定でドレスを着たウサギを描く女の子など、七人七様の発想でTシャツに下絵が描かれていきます。

ドレスを着たウサギを描いた女の子は、「きゃりーぱみゅぱみゅちゃんが大好きです。ポップでカラフルなものが好きなので」とTシャツの上にところ狭しと装飾用の下絵を描いていきます。馬を描いた男の子にその理由を聞くと「午年だから」。「何も考えてなくて、犬が出来てました」という男の子もいました。恐竜や古代の生物を描いた男の子は図鑑を丹念に観察したそう。細かな観察眼で、臨場感ある筆致が印象的でした。ご家族で話しながら猫の絵に決めた子は、丁寧に下絵を描いていました。また、金魚の絵は四角や丸の図形を組み合わせて表現しました。

馬を描いた男の子は「もこもこペンで下絵をなぞるところは難しかったけど、Satoさんと交流できて楽しかったです。初めての作業でしたが、いい経験ができました」と笑顔を見せました。金魚を描いた男の子は「うまくできたと思います。Tシャツに絵を描くのは難しかったけど、みんなに見てもらえるから嬉しいです」と感想を聞かせてくれました。犬の絵と犬小屋を描いた男の子は「もこもこペンは液体なのにドライヤーを当てたら膨らんでいくところが楽しかったです。仕上げはSatoさんがやってくれるそうなので、カッコイイのにしてほしいです!」とリクエストもありました。

ワークショップを終えて、Satoさんに感想を聞いてみました。普段は地元の北海道根室市の自立支援センターや、東京の重度身体障害者のデイサービスなどで絵を描いたり、教えたりしているSatoさん。全国各地に赴きボランティアで作品を一緒に製作し、展示販売。売上げを描いたご本人に渡して自立支援も行っています。描く絵は線画が多く、絵の具の一つにドライヤーなどの熱風を当てると膨らむもこもこペンを取り入れています。もこもこペンは感触が確かめられるため、盲学校の生徒達と絵を描く際に使っているそうです。

「初めは点字をデザインして、視覚障害じゃない方にも、点字ブロックや銀の点字盤を理解してもらいたいなと思って始めました。点字ブロックの上にガムを捨てたり、その上で大人数でたむろしていたりする人もいるので、そういうことを少しでもなくしてあげることが自分の作品を通してできればと思って」とSatoさん。そして障害に応じて様々な手法を取り入れ、絵を描く楽しさなど伝える活動を展開しています。

「まずアートに興味を持ってもらいたくて。盲学校の生徒さんはイメージする力、感じる力がすごく強いので、何か表現することを知ってほしいと思っています。視覚障害の方は色が分からないと思われると思いますが、そんなことは全くなくて言葉で『暖色』と聞いたら、その色をイメージするんです」と体験を通して得たことを語ります。

「沖縄盲学校に行ったのが初めての盲学校での活動だったのですが、小学5年生の男の子が"先生、僕、10歳まで目が見えていればよかった"って言ったんです。その一言に対して残虐なことをしているのではないかなと思ったんですが、隣にいた中途全盲の先生がその子に向かって"僕達は目が見えないけど、目が見えている人たちがすべての色や形をわかっているわけではないし、色や形に騙されるんだよ"って言ったんです。その後、その子が私に"先生、僕、先生の絵を見て、触って、感じて、色や形を想像できる大人になるのでよろしくお願いします"と言ってくれたことが本当に嬉しくて、私はこの活動をずっと続けていこうと思ったんです。勝手に使命感に駆られて(笑)」と、盲学校での活動のきっかけを話してくれました。

京都盲学校の児童生徒とワークショップをしてみてのご感想を尋ねると「京都の皆さんはすごく何でも興味を持ってくださるんです。興味関心がものすごく強いので、やりたくないって言う子が一人もいなかったのがすごいな~と思いました。自分で描きたいものを考えてきてくれたり、こういうことをやりたいと言ってくださったり。京都という町には文化があって、アートも町に溢れているので、そういうところから京都盲学校の皆さんもアートに興味があるのかなと思いました」。

前職は看護師でアートとは無関係だったというSatoさん。20代後半、「どうしようかな、これから」と思っていたとき、急に頭に浮かんだものが絵だったそうです。「絵で自分の気持ちを発散することで元気が出て、絵に救われたんです」。そして、アート活動を行うようになりました。

完成したTシャツ作品は『京都国際映画祭2016』の会期中である10月13日(木)~16日(日)まで元・立誠小学校にて展示されます。「先入観で、視覚障害のある方は絵が描けないのでは? 色を想像できないのでは?と思われている方がたくさんいると思うのですが、全くそんなことはなくて。視覚障害がある方のほうがイメージする力があったり、上手だったりするんです。そして、人の心を見ているような気がするんです。健常者は"こうだからできない"と夢を諦める人もいると思うのですが、ハンディがあっても頑張っている人がいるということを知ってもらえたらと思います」と、活動に込める思いを明かしてくれました。

会期中は展示の他に、一般来場者が「もこもこTシャツ」制作を実際に体験することができる、『Satoの「アートですべての人をつなぐ」メッセージが込められた特別ワークショップ』も同じく元・立誠小学校にて実施されます。ぜひ、ご体験ください!

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