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CGのない時代の身体を張ったサイレント映画に驚きの声!弁士と生演奏も色をつけてお届けした『ショート・コメディ傑作選』

2016年10月16日(日) レポート

10月16日、大江能楽堂で『ショート・コメディ傑作選』が上映されました。
この上映会では、幻の超弩級コメディが復活。常識破りのアクションと王道の道化劇が90年ぶりに蘇りました。
身体を張ったアクションはまさに喜劇映画の原点、『ブッシュ家のポンコツ自動車』(アメリカ/1917/4分 作品提供:おもちゃ映画ミュージアム)、『無理矢理ロッキー破 修復版』アメリカ/1927-2016/ 23分 作品提供:喜劇映画研究会)のほか、同時代の喜劇人傑作選も上映しました。

登壇したのは司会進行の清水圭、そして解説に喜劇映画研究会の新野敏也さん、活動写真弁士の片岡一郎さん、音楽にピアノの上屋安由美さんとバイオリンの益子侑さんです。

「埋もれさせるにはもったいない、ベストセレクションです」と上映作品がいかに見ごたえあるものかを語る新野さん。
まずは新野さんの解説付きで、様々なサイレント映画を観ました。
シチュエーションコメディの原点となったものや、大ヒット映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の“元ネタ"になったもの、漫画『浦安鉄筋家族』の作者がオマージュで作品に用いたギャグの“元ネタ"など、プチ情報も次々と飛び出しました。
「チャップリン、バスター・キートンはいわば、サイレント映画の長嶋茂雄さんや衣笠祥雄さんのような存在。喜劇映画にはパ・リーグの2軍候補ぐらいの存在で、忘れ去られている人がたくさんいますが、改めて見ると面白いんです」と新野さん、その魅力を語られました。

新野さんは、スタントとアクロバットの違いを解説されたのち、バスター・キートンの作品をご紹介。
「キートンは身体能力が高すぎてスタントの代わりになる人がいなかったらしいですね」と片岡さん。
新野さんが紹介されたキートンのギャグ集は、本当にスタントなしで撮影されているのか目を疑うほどのスリリングなシーンがいくつもあり、その豪快さに会場は沸き上がりました。

ここで「よしもとからの秘密兵器を…」と圭。
チャレンジ弁士として落語家の月亭太遊が登場しました。京都住みます芸人でも活躍する太遊。今回は片岡さんに“弟子入り"して、弁士の稽古を重ねました。
圭が片岡さんに太遊について尋ねたところ、「素質は素晴らしいです」と評価も上々。
太遊は約4分の『ブッシュ家のポンコツ自動車』に弁士として声を添えました。
初めての弁士を終えて、「落語家らしく、ダジャレも入れてみました」と太遊。積極的に創意工夫する太遊に「(若い芽は)早めに潰しておかないと!(笑)」と片岡さん、“脅威"を感じておられるようでした。

活動写真弁士として片岡さんは、国内はもとより海外でも活躍しています。
日本で活動していても関東と関西ではしゃべりの要望が異なるそうで、地域性の違いも面白いとのこと。また新野さんも「昔の映画に現代の言葉を組み合わせるのも面白い」と、その魅力を語られました。

最後は『無理矢理ロッキー破 修復版』の上映があり、片岡さんが弁士で登場。その真骨頂を見せてくれました。
『無理矢理ロッキー破 修復版』は50分~60分の作品でしたが、アメリカでも10分程度しかフィルムが残っていなかったそうです。ですが、おもちゃ映画ミュージアムに新たにフィルムが寄贈され、約20分までよみがえったそうです。「90年前の感動がよみがえりました」と新野さん。今回、貴重な上映会となりました。

身体を張ったアクションに、驚きの連続で魅せる展開。
そして片岡さんのナレーションにピッタリのセリフ、モノクロのスクリーンもカラフルに見えるような上屋さんと益子さんの演奏。映画の世界にグッと惹き込まれます。
サイレント映画と言えども雄弁で、会場のあちこちから笑い声が起こりました。

CGのない時代、暴走機関車に振り回されたり、激流に流されるなど、体を張った撮影は本当に見もので、「撮影のエネルギーは相当すごい」と新野さんも声に力を込められました。

上映会を終えて片岡さん、上屋さん、益子さん、新野さんにご感想を尋ねました。
「『京都国際映画祭』は回を重ねるごとに洗練されていて、今年は大江能楽堂のような場所でできてありがたいです。来年も再来年もできたら」と片岡さん。
上屋さんと益子さんは「能楽堂という素敵な場所で演奏できて嬉しかったです」。
そして新野さんは「コメディは大きいスクリーンでたくさんの方と見るのが面白いと思います。どうもありがとうございました」とご挨拶され、『ショートコメディ傑作選』上映を終えました。

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