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舞台挨拶の特別ゲストに高島礼子さんが登場! 「京都国際映画祭2016」を締めくくる、ドキュメンタリー映画『残されし大地』上映

2016年10月16日(日) レポート

10月16日(日)、よしもと祇園花月でドキュメンタリー映画『残されし大地』が上映されました。
4日間続いた「京都国際映画祭2016」は、このプログラムをもって終了。最後を締めくくる、クロージング作品となりました。

この作品の監督は、ベルギー出身の映画音響技師、ジル・ローラン。
2011年の福島原発事故後の福島をテーマに製作したドキュメンタリーです。
全町避難の富岡町に独り残り続け、動物の保護活動を続ける男性、仮設住宅から南相馬市の居住制限区域(当時)に一時帰宅する夫婦…。淡々と進んでゆく日常生活の中で、彼らが自然体で紡ぐ言葉の中に、「ある日」を境にかつて故郷を失った人たちの今と、これからが見えてきます。

上映前のトークショーには、司会の清水圭と「京都国際映画祭」総合プロデューサーを務める奥山和由氏、そしてジル・ローラン監督の妻、鵜戸玲子さんが壇上に。

なぜローラン監督ではなく奥様が来られたかというと、ローラン監督はこの作品を撮り終えたあと、母国ベルギーで編集中の今年3月に地下鉄テロに巻き込まれ、命を落としました。妻の鵜戸さんはその遺志を引き継ぎ、仲間たちとともに作品を完成させたのです。
鵜戸さんは、「ベルギー本国でも公開が始まり、たくさんのお客様に来ていただいています。日本でも、京都国際映画祭という晴れの舞台に立たせていただき、皆様に観ていただけるということで、夫も私と一緒に、この会場のどこかにいて喜んでいるのではないかと思います」と挨拶を。

奥山氏は「実はこの『残されし大地』に触れることができたのは、たったの1カ月ほど前なんです」とのこと。
「早朝に何気なくNHKを観ていたところ、美しい映像が映っていたんです。『いい画だな』と思ってよく聞いてみると、ブリュッセルのテロで犠牲になった32人のなかのひとり、ジル・ローランさんが監督をなさった作品だと。富岡町をずっと撮り続けた映画であると知り、どうしてもこの映画が観たいと思ってNHKに電話しました」とのこと。
あらゆる手を尽くして鵜戸さんに連絡を取ろうと試み、鵜戸さんと連絡がついたのはその日の夜。
鵜戸さんは「電話で、映画プロデューサーの奥山さんだと伺い、『まさか、奥山さん違いでは』というぐらいびっくりしました」とふり返りました。

そしてジャパンプレミアを記念してスペシャルゲスト、女優・高島礼子さんが登場!
艶やかな着物姿で鵜戸さんに大きな花束をプレゼントし、鵜戸さんに「お目にかかれて光栄です」と語りかけました。
奥山氏は、「ある映画の企画で高島さんとお会いして、僕は雑談が長い人間なのですが、今日、すごくいい映画を観たと『残されし大地』を紹介すると、『ぜひ観てみたい』とおっしゃるのでDVDでご覧いただいたんです」と話しました。

高島さんは「私はドキュメンタリー映画はあまり観たことがなかったので、『ドキュメンタリー映画って、こういう作品なんだ!』って感動したんです」と言うと、「そんなに観たことないですか?」と奥山氏。
思わず「すみません! 申し訳ないです」と高島さんが謝り、会場が笑いに包まれるひと幕も。
清水圭は、「映像はきれいなのに、なにか哀しさが伝わりますよね」と感想を。
映画音響技師だったローラン監督の作品は、音の美しさも特徴です。
高島さんも「映像はもちろん美しいんですが、音がものすごくどんどん入ってきました。一緒に映画の方たちとテーブルを囲んで会話を楽しんでいるような、そういう感覚がするぐらい。聴覚ってこんなに大事なんだなと初めて感じました」と語りました。
また、高島さんから「出演してくださる方々が、あんなに自然なことってあるんでしょうか?」と質問も。
奥山氏は「あれは特別ですよね。ジル・ローランさんのキャラクターがあってのことだと思う。やはり皆さん安心してらっしゃいますよね」とローラン監督を偲びます。

もともと環境に強く興味を持っていたローラン監督は、福島の現状をとても心配されていたそうです。
いろいろ調べているうちに、映画にも登場する松村直登さんの存在を知り、福島に通ううちに他のご家族とも知り合い、最終的にオムニバスのような形で福島の今を映し出したと言います。
また、『残されし大地』との邦題を付けたのは鵜戸さん。「直訳すると、『見捨てられた大地』となってしまうんですが、映画を観ると『見捨てられた、という感覚とは少し違うな』と。自然な会話の中で時々笑っていたり、ふざけていたり、どこか明るいところもある。残されてもやはり土地に愛着を持って人々は生きて行くんだというメッセージがとても伝わってくる作品でもあるので、『捨てられた』は何か違うと思ってずっと考え続けて『残されし』にしました」と明かしました。

最後に、高島さんは「この作品は、今日の上映が終わったらしばらく観られないので、皆さんはものすごくラッキーです。素敵だなと思ったら宣伝していただき、上映が始まったらみんなで観に行ってあげてください。よろしくお願いします」とPR。
奥山氏は、「奥様から伺ったんですが、ジル・ローランさんは京都が大好きで、京都に住みたいとおっしゃっていたそうです。その京都で皆さんにご覧いただけることを、心から喜んでいると思います。温かい目でこの映画をご覧ください」。
そして鵜戸さんは「感無量というひと言しかありません。あの日から半年あまりでこのような舞台に立たせていただき、夫も喜んでいると思います。『どうして私ひとりを置いて逝ってしまったのかな』と思ったりもしましたが、それを補ってあまりあるご褒美というか、機会をいただいた気持ちです。今日はごゆっくりご鑑賞いただき、そしてこの映画の行く末も見守っていただけたらと思います」と語りました。

ドキュメンタリー映画『残されし大地』は、2017年春に公開予定です。

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