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低予算ならではの苦労話も!偉大な2人の外国人を追いかけた傑作ドキュメンタリー映画『ウォーナーの謎のリスト』舞台挨拶

2016年10月14日(金) レポート

映画祭2日目に開催されている、立誠小学校での立誠シネマプロジェクト『ウォーナーの謎のリスト』にて、金高謙二監督とプロデューサーの花井ひろみさんの舞台挨拶が行われました。
司会は芸人のバッファロー吾郎・竹若が務めました。

同作品は、第二次世界大戦中に日本の文化財を救うために奔走したアメリカ人ラングドン・ウォーナーと、神田神保町の古書店街を救ったと言われるロシア人、セルゲイ・エリセーエフの活躍を描いたドキュメンタリー。
撮影では日本のほか米国やフランスなどでも行われ、文化人30人以上にインタビューを慣行した力作です。

上映後に登壇した金高監督は何度も京都に足を運んでいるとのことで、今回の映画祭では早速カレーうどんを食べた、と会場を和ませていました。
また花井さんは、元離宮二条城で開かれた13日のオープニングセレモニーに感激したとのこと。
京都の人々の東西南北を意識した暮らしにも触れ「普段方角を意識しない私にとってはカルチャーショックを受けた」と古都の印象を語っていました。

続いて本作品の制作のきっかけについては、2013年に発表したドキュメンタリー映画『疎開した40万冊の図書』に遡るとのこと。
「制作時に神田にある古書店・八木書店の八木会長から“神保町界隈が全く燃えなかったのは、エリセーエフという人がGHQのマッカーサーに燃やさないように進言した、という話は本当か"と聞かれたことが『ウォーナー~』の出発点だった」と監督が当時のエピソードを披露しました。
さらにエリセーエフを追及するうちに、151か所の日本の文化財を戦火から守ったとされる人物・ウォーナーの存在を調べるに至ったそう。好奇心や探求心に突き動かされた末に完成した作品だったとコメントしていました。

また「ウォーナーやエリセーエフが日本の文化を学んでいた、という素地があったからですが、当時は敵対する立場だったにも関わらず敵国の文化財を守ろうと働きかけたことはすごい。それは全世界の人類の財産、という意識があったのだと思う」と二人の偉大な外国人に感銘を受けた様子。
また花井さんは「世界大戦は日本の歴史の中でも大きな出来事ですが、それでもなお、こうして文化財が残ってきたのは残してきた人がいるということ。その功績を後世に残したい」と本作への思いを語りました。

劇中の文化人などへのインタビューについては、編集でカットした人物が3、4人いるとのこと。
その理由は「上映時間が長くなったためにカットせざるをえなかった」と監督。
「加害者側が何をしたのか、略奪や戦火に遭った文化財がどうなったのか、というところまで撮影したのですがカットしてしまいました。ぜひDVD化の折には特典映像で入れたいですね」とさりげなくDVD化を花井さんにアピールしていました。

撮影の苦労話にもトークが及び、監督がほとんどのシーンを撮影したこと、録音は花井さんが行ったと打ち明け、会場を驚かせました。そうして何か国も撮影を敢行していた中では、いかに安く機材を飛行機で運ぶか、という点でも大変だったよう。
「なるべく機内に持ち込むため、搭乗締め切り時間の直前まで格闘しました」と低予算ならではのエピソードも飛び出しました。

さらに困ったのはエリセーエフの義理の娘にあたる女性のインタビューでのこと。
フランス語の通訳者をつける予算がなく、急きょ現地在住の日本人に通訳を依頼したり、車を借りずに地下鉄で移動するなど予算のやりくりに苦心した思い出話も語られました。

イベント終盤では「京都でこの映画を最初に上映できて嬉しく思っています。この映画が長く愛されることを願っています」と監督、花井さんは「本作が全国で上映できるように今後も活動していきたいと思います。引き続き応援を宜しく御願いします」とそれぞれが作品をアピール。興味深い裏話で盛り上がった舞台挨拶でした。

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