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世界最大の映画スター、チャールズ・チャップリンの名作が続々! 世界初公開のアウトテイクも!

2016年10月15日(土) レポート

10月15日(土)、西本願寺・安隠殿にて、「チャップリン特集」より『キッド』が上映されました。
喜劇王といわれ、世界最大の映画スターとして親しまれたチャールズ・チャップリン。そんなチャップリンの名作・傑作が一挙に上映されるまたとない機会です。
この日は世界初公開のフィルムを含む、貴重なアウトテイクが公開されました。

舞台挨拶では、脚本家で日本チャップリン協会会長の大野裕之さん、そして吉本イチのチャップリン通、桂ちきんが壇上に。

倉田あみの司会進行のもと、まずはチャップリンの人柄が大野さんから語られました。
「チャップリンは大変な親日家だったんです。秘書の高野虎一さんという方の影響で、使用人全員が日本人だったといいます。京都にも二度いらっしゃり、この伝統文化を愛してくださいました。そんな京都の伝統的な場所で、チャップリンの映画を観られることを大変うれしく思います」と語りました。

続いて桂ちきんもご挨拶。「僕は“なにわのチャップリン"と言われてるんです。なぜなら落語をすると、客席が“サイレント"になるんです」と観客を沸かせます。

続いて大野さんが『キッド』の解説を。
『キッド』は1921年、チャップリンが31、2歳の頃に数年かけて撮影された、53分に及ぶ初の長編映画です。放浪者(チャップリン)が、置き去りにされた赤ん坊を愛情深く育てて5年。貧しいながらも笑いに包まれ幸せに暮らしていた放浪者と5歳の子ども(ジャッキー・クーガン)に大きな転機が訪れて…。笑いあり、涙ありの傑作です。
「私はクーガンちゃんが大好きなんです」と倉田あみ。すると大野さんからジャッキー・クーガンとチャップリンの出会いが語られました。
「チャップリンがスランプに陥り、どんな映画を撮ろうかと頭を悩ませていた時に、偶然4歳のクーガンが舞台で歌っているところを観るんです。チャップリンも5歳で初舞台を踏んでいて、自分の幼少時代を重ね合わせたのかもしれません」。その時、チャップリンがクーガンに職業を尋ねてみたところ、「僕は魔術の国で生きる魔術師だよ」と、4歳とは思えない粋な返答が。それをきっかけに「この子と撮りたい」と触発されたと話します。

『キッド』上映後、「何度見ても素晴らしいシーンの連続でした」と大野さん。
続けて、チャップリン自身も幼少時代は極貧だったと明かし、「チャップリンは幼少時代、極貧でしたが、お母さんと笑い話をしていると空腹を忘れることができたといいます。ということは、衣食住は基本的に大切ですが、それと同じぐらい“笑うこと"も大事だということ。笑いは単に生活を彩るものではなく、欠かせないものだと『キッド』を観て感じます」と語りかけます。

続いてはお待ちかね、チャップリンのアウトテイクを公開!
大野さんは「チャップリンは完全主義者で、満足いくまで何度でも撮り直す人でした。『キッド』も、完成版の53倍ものフィルムを使って撮られたんですよ」と語り、倉田もちきんも仰天! はたしてどんなアウトテイクが観られるのでしょうか?

1本目は、『街の灯』の幻のオープニングシーン。
「非常にとてもよくできているオープニングなんですが、チャップリンは全カットして別のシーンに替えました」と、そのカットされたシーンを上映。
「ここまで完成度の高いシーンをすべて使わないなんて、すごいですよね」と解説しました。

ホームムービーで撮影されたメイキング映像も紹介。
チャップリンが女優に演技指導する様子やカメラマンへの指示、撮影の合間のオフショットなどが収められていました。

続いては、いよいよ世界初公開のフィルム!
大野さんをはじめとするチャップリンの研究者たちも、なんの作品のアウトテイクなのかわからない、作品自体がボツになったという非常に貴重なものというから、お客さんも興味しんしん。
短時間に笑いがふんだんに織り込まれている内容に、お客さんからも笑いが起こりました。

最後は、1947年の『殺人狂時代』のアウトテイク。
チャップリンのアウトテイクの中で現存している一番最後のフィルムで、チャップリンが58歳の時の作品です。
劇中でチャップリンは付け髭をつけておらず、内容も銀行員を演じるチャップリンが裕福な女性の命を次々と奪うというシニカルなもの。当時は第二次世界大戦終結直後で、チャップリンの平和的思想は非難の的となり、猛烈なバッシングを受けていたそうです。さらには女性スキャンダルもでっち上げられ、絶大なる人気を誇ったチャップリンでしたが誰もが距離を取るようになっていました。そんな厳しい状況下でも、変わらぬ完璧主義で映画を撮り続けていたチャップリン。
大野さんは「このフィルムを地下室で観て、泣けてきました。最もバッシングを受けていた中でも、あいかわらずこうして何度も撮り直していたんだなと。映画を愛し、演技を愛し、そして映画に愛されていたんだなと思います。チャップリンの想いが伝わったのではないでしょうか」と語りかけました。

こうしたアウトテイクはどこから発見されたのか? そんな疑問にも答えてくれた大野さん。
「頭に思い描いたものを撮っていたチャップリンにとり、アウトテイクはスケッチブックのようなもの。だから本人は『捨ててほしい』と思っていたでしょう。でも、『これを持っていたらきっと値打ちが出る』と弟が隠し持っていたりしたんですね。チャップリンが国外追放された頃、チャップリンのフィルムを持っていたら政府から睨まれたような時代に、アメリカにも防空壕があって、そこに隠してたんです」というから驚きです。
チャップリンのアウトテイクが見つかったのは、1980年代のこと。
大野さんは、「まだ世間に公開されていないフィルムもあります。チャップリンはまだまだありますので、またお目にかけたいです」と語りました。

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