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コミカルな活弁と音楽で映像がイキイキと色づく!「家族で楽しもう!おもちゃ映画傑作選」

2016年10月16日(日) レポート

10月16日(日)、よしもと衹園花月にて、子どもはもちろん大人でも童心に返って楽しめるサイレント作品を集めた上映会「おもちゃ映画傑作選」が行われました。
“おもちゃ映画"とは、大正から昭和にかけて普及した玩具映写機用に販売された無声映画の断片のこと。
今年は、第1回より好評だった日本アニメのルーツと言われる国産動画作品を集めたプログラム『おもちゃ映画de玉手箱』のほか、アメリカ発の『ちびっ子ギャング』シリーズなどが上映されました。

MCを担当するのは高山トモヒロ。“おもちゃ映画"や活弁を初めて体験するそうで、「非常にワクワクしています。今日はお客さんとして楽しみたい!」と挨拶します。
続いて、解説のおもちゃ映画ミュージアム代表・大阪芸術大学教授 太田米男さん、活動写真弁士=活弁の大森くみこさん、パーカッション・トイピアノの鳥飼りょうさん、作曲・キーボードの藤代敦さんが呼び込まれます。

大森さんは、「ここで新喜劇をやってるんですよね。そう思ったら何か言わないとアカンのかなと思って…」とちょっぴり緊張!? 
太田さんは、「生の雰囲気、生の演奏で見られるのは、本当に贅沢な映画の楽しみ方です」と“おもちゃ映画"の魅力を語ります。

大森さんは、10年ほど前、テレビで活弁の特集を見たことをきっかけに、この世界に飛び込んだそう。
鳥飼さんも「5年ほど前に引っ越した先が、現在、主に活動している上映室の近所で。そこから縁が生まれました」と、サイレント映画との意外な出会いを明かします。
高山から「映像に合わせた生演奏の難しさは?」ときかれた藤代さんは、「音のない映画に音をつけるのは、色を塗るような作業。この色で合っているのか、正解がないところが難しい。そのぶん、ぴったりの色が見つかったらすごくうれしいです」と答えていました。

まずは1本目の『おもちゃ映画de玉手箱』からスタート。
太田先生によると「大正から昭和の日本産アニメーションを集めたもので、いまのアニメのルーツと思ってもらっていい。
古い映画ですが、すごく新しい発見をされると思います」とのことで、「いまここで、この時間にしか見られない、本当に珍しいもの」だそうです。

『一寸法師』『金太郎・大江山』などおなじみの昔話や、当時の人気マンガを動画にした作品などを集めた映像に、見事なタイミングで語りをつけていく大森さん。
レトロで味のあるキャラクターデザインはもちろん、臨場感あふれる音楽も合わさり、笑いがどんどん増幅されていきます。

「素晴らしい! これが活弁なんですね!」と大興奮の高山。
大森さんは、「現代的な言葉も入れていて、正統派の活弁ではないかもしれませんが(笑)、キャラクターを見ながらいろいろ試してみています」。
太田さんも「映像だけでも面白いし、活弁も人によってガラリと変わる。大森さん、鳥飼さん、藤代さんはいつも一緒に活動しているので息も合っている」と、その魅力を解説します。

次の作品は、日本、そして世界の人気キャラクターが夢の競演を果たした作品を集めたもので、「当時は著作権という概念なかったんですね。すごく面白いんですが、いまの時代は見ることができないものです」(太田さん)。通常なら実現不可能(?)と言える珍品揃いで、一緒に見ていた高山も驚きを隠せません。大森さんは「おおらかな時代だったんですね」としみじみ話していました。

アメリカのアニメーションからも、『オズワルド・ラビット』など3本を選んで上映。
さすがアニメーション先進国、古い作品とは思えないなめらかな動きや魅力あふれるキャラクターに、観客の皆さんも思わず見入っています。

「海外のアニメは完成度が高いので、解説をさほど入れなくても大丈夫。日本のものは話が飛んでいたり時代背景がわからなかったりするので、少し説明を入れるようにしています」とは大森さんのコメント。この日はなんと30種類の楽器を持ち込んだという鳥飼さん、そして藤代さんが奏でる音楽や効果音も見事にマッチしています。

最後はアメリカ、そして日本でも大変な人気を博した『ちびっ子ギャング』シリーズから、新たに見つかった妖怪退治にまつわるお話を。いつもはいたずらを仕掛ける側のちびっ子たちが、今回はお化け屋敷に翻弄されてしまうという、ひと味違うストーリーになっています。

大森さんは、吉本新喜劇や芸人たちのギャグも交えた、全編大阪弁の活弁を披露。
個性豊かな子どもたちの表情やキャラクターを生かした多彩な声色、雄弁に語りかける音楽でも笑いを誘います。

まさに“ライブ"という全上映を終え、出演者からは改めて観客の皆さんにメッセージが。
「まだまだ活弁を知らない方もいらっしゃると思うが、いまの映画とはまた違う豊かな世界が広がっている。ぜひいろんな作品を見てください」と大森さん。
鳥飼さんは「今日は活弁と演奏でしたが、演奏だけで見せるスタイルもある。ぜひお近くの上映会に行ってみて」と呼びかけます。
藤代さんは客席の雰囲気に感激した様子で、「(会場にいる)いまの子どもが笑ってくれたら、当時の子どもたちの笑い声も聞こえてくるようで、とても楽しい上映会だった」と感想を述べました。

最後は太田さんが、「サイレント映画特集も3年目に入り、ようやくきちっとした形に発展してきた。これからも見る機会の少ない作品を選んで、皆さんに楽しんでもらいたい。ぜひ応援してください!」と締めくくり。大きな拍手に包まれ、プログラムが終了しました。

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