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中江裕司監督が語る沖縄のチャーミングな“おばぁ”平良とみさんの自由奔放エピソード—『ナビィの恋』舞台挨拶

2016年10月14日(金) レポート

10月14日(金)、『京都国際映画祭』映画部門・沖縄国際映画祭連携作品『ナビィの恋』がTOHOシネマズ二条で上映され、監督の中江裕司さんが舞台挨拶に登場しました。

1999年に公開された『ナビィの恋』は、沖縄の粟国島を舞台に、初恋の人と再会した“おばぁの恋”を描いた作品。
京都出身、沖縄在住の中江監督が沖縄芝居の役者や島唄歌手をそろえ、音楽と笑いをふんだんに織り交ぜて綴る“老いらくの大恋愛”は全国で大ヒットを記録しました。
この映画の中核となるチャーミングなおばぁ・ナビィを演じたのが、昨年12月に惜しまれながらこの世を去った沖縄芝居のベテラン女優・平良とみさん。
2001年のNHK連続テレビ小説『ちゅらさん』で全国区の人気者となり、“おばぁ”の愛称で親しまれた平良さんのブレイクのきっかけを作ったのが『ナビィの恋』だったのです。

舞台挨拶のMCは、『ちゅらさん』で平良さんと共演した沖縄出身のガレッジセール・ゴリ。
「すごくユーモアのある楽しい人でした」と、テレビなどで見せる“おばぁ”そのままの朗らかな人柄を偲びました。そして中江監督も、平良さんの貴重な秘話を披露。
中江監督ら3人の監督による1992年のオムニバス映画『パイナップル・ツアーズ』に出演した平良さんに「私は昔から老け役ばかりなので、恋する乙女の役がやりたい。そんな話を書きなさい」と言われ、4年をかけて書きあげたのが『ナビィの恋』だったそうです。つまり、平良さんのこのひと言がなければ、本作は生まれなかったのですが、「いざ平良さんに脚本を持っていったら、『私はそんなこと言った覚えがない』と。一旦は出演を断られて困りました(笑)」と中江監督。自由奔放な“おばぁ”らしいエピソードに観客から笑いが起こりました。

そして、ナビィの夫のおじぃ役を演じた沖縄民謡の名手・登川誠仁さんもかなりの自由人だったよう。
出演交渉のため、中江監督が何度も自宅を訪ねるも、なかなか面会に応じてくれなかったそうです。
「最初に行ったときは、『俺はいないと言え』と奥さんに言うご本人の声が聞こえてきて(笑)。その後も『今日は寒いから会えない』とかいろんな理由で断られ続けた末に、やっと会えたんです」と中江監督。とはいえ、一旦出演を決めて撮影に入ると、登川さんは好きなお酒を一滴も飲まず、真摯にお芝居に臨んでくれたといいます。

とここで、『ナビィの恋』の助監督を務めた小林聖太郎監督がゴリに呼び込まれて登場。
翌15日、立誠シネマプロジェクトにて上映される自身の作品『かぞくのひけつ』の舞台挨拶のため京都に来ていた小林監督を、中江監督が半ば強引に(?)引っ張り込んだそうで、沖縄のおじぃやおばぁたちにも負けない自由なノリにゴリも大笑いです。
小林監督は、撮影の合間に登川さんが即興で三線を弾いて歌ってくれたことなど、撮影中の楽しい思い出を明かしてトークを盛り上げました。

最後に中江監督は、『ナビィの恋』について「沖縄の風土が撮らせてくれた映画。
僕を育ててくれた沖縄の風景や人と一緒に作ることができた大切な作品です」とコメント。
公開から17年が経った今も色褪せることのない沖縄映画の傑作への思いを語り、舞台挨拶を締め括りました。

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