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建築の奥深さを実感…西本願寺・伝道院でトークイベント「建築モデルの魅力」を開催!

2016年10月15日(土) レポート

10月15日、西本願寺・伝道院 1階でトークイベント「建築モデルの魅力」が行われました。
登壇者は建築家・遠藤秀平さん、建築家・中村勇大さん、美術史家・河上眞理さんです。
このトークイベントは、伝道院で実施される遠藤秀平さんによる「コンセプトモデル展」の開催に合せ、同じく建築家の中村勇大さん、美術史家として知られる河上眞理さんを招いて建築モデルの魅力に迫るスペシャル企画です。

遠藤さんが京都国際映画祭に参加するとことなったのは、プロデューサーのおかけんたが大阪で遠藤さんの展示を見たことから。
トークショーはそんななれそめからスタートし、会場である伝道院についてのレクチャーもありました。
「伝道院は一見洋風ですが、イスラム、トルコ、インドなどいろんな意匠がまじりあっています。当時、伊東忠太(伝道院を手掛けた建築家)が何を考えていたのか、ずいぶんとチャレンジしている。外に並んでいる石の彫刻も、忠太がスケッチをとったオリジナルで、こういうものはヨーロッパでもあまりなくて、ロマネスクの教会の中には聖獣、奇妙な怪獣がいますが、それと相通じるところがあります」と遠藤さん。

そして数十年来の友人関係であるという中村勇大さんのご紹介と、中村さんの推薦で今回、登壇されるにいたった河上眞理さんのご紹介もありました。

河上さんは東京駅の建築で有名な辰野金吾に関する著作も出版されています。辰野の弟子が伊東ということで、トークは辰野さんに関する話題でも盛り上がりました。

また会場に展示されてある500個のミニチュア建築についてもご説明がありました。
こちらは遠藤さんが世界中を巡って集められたものや、お土産でもらった世界の代表的な建築物のミニチュア版です。会場では世界地図を模して展示されていました。
精度の高いミニチュア建築をご覧になった河上さんは、「完成度の高いミニチュアがアート作品になるのが面白いですね」と関心を寄せられました。

また、「明治維新で建築がごろっと変わった」と遠藤さん。
その当時、イギリス人のコンドルという建築家が来日したのですが、なぜ日本に来たかということが長い間の研究テーマだそうです。
遠藤さんは、そこにはとある結社が関わっているのではないかという興味深い持論も展開されました。伊東忠太もその結社にか関わっているのではないかということで、「何かそういうシンボルが伝道院に隠れていないか、探しています」と会場の笑いを誘いました。

他に、河上さんの研究対象であるジョヴァンニ・ヴィンチェンツォ・カッペレッティというイタリアの建築家についての紹介もあり、「現在、カッペレッティの建築が何一つ残されていないことが悔やまれる」と河上さん。
遠藤さん、中村さんに「建築家の立場としても関わった建築物が解体されるというのは、どういう思いなのかお聞きしたい」と質問され、お二方とも「非常に寂しい」と口を揃えていました。そして「建築は人の記憶や思い出の一端を担うものだと思う」と遠藤さん。ミニチュア建築物にしても、「行ったことのある空間を凝縮するのが建築の役割なんだろう」と話していました。

中村さんは現在、『ポケモンGO』にはまっておられるそうで、「遠藤さんがミニチュア建築物を収集されるのは、『ポケモンGO』でモンスターを捕獲することと同じような感覚では?」という見方も提示されました。
会場にも展示されている清水寺のミニチュアは、京都タワーのビルに設置してある“ガチャガチャ"で中村さんが引き当てたもので、5回挑戦してゲットしたそうです。

また、日本人とヨーロッパの人とでは、建築の見方に違いがあるとも。「もっと建築物に注目してほしい」とお三方。日本は、ミニチュア建築もとても少ないそうです。

多岐にわたる内容で盛り上がった1時間のトークショーですが、早くも時間となりました。
最後に登壇者お一人ずつご挨拶が。

まずは、遠藤さんからご挨拶。「伊東忠太はとてもエネルギッシュな人で、危険を顧みず、冒険をしながら世界中を巡りました。特に若い人にはその冒険心を受け継いでもらいたいと思います。この伝道院にも未知の世界に行ってみるという気持ちが建物に現れています。怪獣をくっつけるとか、なぜあんなものを作るのか、建築物を見ると対話が生まれると思いますので、建築のミニチュアも見つけたら、買ってみてください」と促しました。

「ミニチュアをきっかけに旅をするのもいいと思います」と中村さん。この特別展には遠藤さんが厳選したミニチュアモデルもたくさん展示されているので「ぜひ期待して見てほしいです」と誘われました。

河上さんは、今回のミニチュア建築の展示で「足を使って学ぶということをもう一度、呼び覚まさせてもらった」とのご感想を。ミニチュア展示をきっかけに実際に現場に行くなど、見ることの大事さを再認識されたとお話されました。

遠藤さんいわく、「建築は原寸大の模型である」。「そういう意味でも、模型やミニチュアには語りつくせない余地が残っていると思います」と語りつくせない魅力の奥深さを示唆され、トークショーを終えられました。

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