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多彩な映像とトークで観客を魅了した「実験映画史に見る「映画言語」の変革」トークショー

2016年10月15日(土) レポート

映画祭3日目は元・立誠小学校での立誠シネマプロジェクトにて、アーティストであり映画監督の能勢伊勢雄さんと、よしもと芸人で同映画祭のアートプランナーを務めるおかけんたが登場しトークショーが行われました。

「昨今はわかりやすい映像しか受け付けられない時代。映画が誕生した当時の映像が持っていた魔術的な力が失われた」と語る監督。
そこで今回は、本来映像が持っていた力を再認識しようという内容で進行しました。
最初に1969年に制作された監督の作品『スクラップ・フイルムズ』『モアレ』を上映し、トークが始まりました。

映画誕生の父・リュミエール兄弟が世界で最初に上映した映像や、ロケットが月にぶつかるシーンが印象的な『月世界旅行』、戦争映画『戦艦ポチョムキン』などのサイレント映画を紹介した監督は「この当時は音声がないけれど、映像にインパクトがあるし力がある」と解説。
そして1979年に出版された書籍『エクスパンドシネマ』の序文 “人間の歴史はテレパシーを通してだけ、なんとか生きながらえてきた。エクスパンデッドシネマには進化を超えた人間の脳が感知する超自然的なメディア・パラクレート(気づき)に到達するための映像の活用である。" を引用。
単純に観て楽しむだけではなく、インスピレーションのための映像があるのでは? と観客に問いかけました。

その最たる例として、ストーリーを挟まずにアーティストが思い描いた映像を表現する「実験映画」を挙げました。
例えばアーティスト、ヴィキング・エッゲリングの『対角線交響曲』やオスカー・フィッシンガーの『スタディーNo.6』などを紹介。
なかでもプラネタリウムを使った映像を発表したジョーダン・ベルソンや、ネガフィルムに直接絵を描く手法を完成させたレン・ライについては、おかが「この時代のほうが、今よりもよほど表現方法が幅広いですね」と感心した様子で聞き入っていました。

続いて監督は、実験映画が現在のミュージックビデオの原点となっていったことを解説。
ジョン&ジェームズ・ホイットニーの『ラピス』やケネス・アンガーの『ルシファー・ライジング』などを観客と鑑賞し、約2時間にわたる盛りだくさんのトークは幕を閉じました。

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